これから需要が急拡大する大型蓄電システム。しかし、実際に広く普及させるためには大きな課題がある。リスクとコストの低減だ。ここでいうリスクには、爆発や発火などのほか、「いざ使おうと思ったら動作しなかった」ということが含まれる。これまでの災害や事故時の事例をみると、後者が意外に多い。
こうしたリスクに対応するため、定期的、あるいは使用時間に応じた交換を励行し、かつ信頼性が高く実績のあるメーカの電池を採用する例が多い。だがこのことが、もう1つの課題であるコストに響いてくる。交換で運用コストは跳ね上がり、信頼性を最重視して電池を選べば導入コストも大幅に上がる。そうでなくても電池の価格は極めて高い。ビルなどの施設用になると数百万~数千万円にも達する。
こうした課題の解決に向けEC SENSINGは、「電池の非破壊診断技術」を利用したエネルギーマネージメント・サービスの構築を進めている。その概念は、下掲図に示す通りである。この技術のルーツは、早稲田大学の逢坂哲彌研究室が1982年に発表した「インピーダンス法」にまでさかのぼる。信号処理技術を利用し電気化学系をフーリエ変換(FT)でデジタル処理するという手法である。この技術は、その後も同研究室で継続的に研究がすすめられ、横島時彦らによって矩形波・電気化学インピーダンス法(SW・EIS)として完成をみるに至っている 注)。
この技術の特徴は、測定精度が極めて高い点にある。すでに携帯型電子機器などには、「バッテリー・マネジメント」といった名称の、電池管理機能を搭載している。しかしこの方式では、たとえば容量減少が電池の正常な劣化によるか短絡などの異常の兆候なのかは正確に判別できない。
EC SENSINGが保有する非破壊診断技術を使えば、この問題は一気に解決する。電気特性や使用時間を把握するだけでなく、電池セルを構成する正極や負極、セパレータなどの状況を個別に把握できるからだ。こうすることで、正確に電池の健康状態(SOH)を把握し、電池の非破壊診断の精度を飛躍的に高めることができる。測定結果を蓄積することで、電池セルの劣化状況把握や寿命予測、短絡などの異常状態の察知も可能になる。
開発した非破壊診断技術は、さまざまな蓄電池に適用できる。リチウムイオン電池以外にも、全固体リチウム電池やニッケル水素電池、鉛蓄電池、さらには燃料電池などにも応用可能だ。
注)この技術に関する特許など知的財産権特許は早稲田大学が所有しており、EC SENSINGはその優先実施権を保有している。